第99章

山本が後から入ってきて、祖父の湯呑みに茶を注ぎながら小声で言った。

「若奥様も……本当に意地っ張りで」

祖父の顔色をうかがうように、そっと視線を走らせる。今日、祖父が大島莉理を呼んだのは、結局――引き留めるつもりがあったのだと山本は分かっていた。

「ずっと、あの人のことはお気に召さなかったのでは?」

田中祖父は茶を一口含み、疲れのにじむ声で吐き出す。

「大島莉理は頑固だが……汚れがない。田中尚哉の目はな……最近、ますます悪くなっとる」

浅はかで、欲の匂いを隠しきれない加藤柚奈の顔が浮かび――。

田中祖父はこめかみを押さえた。

……

書斎の外の廊下は長く、床まで届く大きな窓の...

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